Spec Ops: The Line 感想

急速な発展を続ける中東の大都市ドバイは砂嵐によって隔離された。米軍の英雄コンラッド大佐は33部隊と共に救援に向かうがやがて音信が途絶える。数ヶ月後、コンラッド大佐と思われる人物から救難信号が届いた。デルタフォースのウォーカー大尉は状況を探るために現地へと入る。

プレイヤーはウォーカー大尉となり、ドバイの現状を調査するのが目的だ。しかし、現地では予想外の事態が発生しており、脱出すらも難しい状況になった。そこで事態の発端を探るべく、荒廃した街ドバイを探索することになる。

本作で扱われている題材は普遍的でありふれたものだ。しかし、映画や小説の世界ではよくあれどゲームの世界ではそうとも言い難く、特にシューターでは戦争を正当化してその行いに疑問を抱かせないタイトルが大半を占めている。それはゲームの世界くらいは英雄扱いされたいとか、爽快感を重視して気持ち良くゲームをさせたいという意向なのかもしれない。

だが本作はそのような英雄物語を否定する。「人を救助しに来たのになぜ人を殺しているのか?」と主人公たちは疑問に苛まれ、罪の意識を背負いながら戦い続けるしか道はない。プレイヤーの倫理を試すかのごとく辛い選択肢を与え、引き金を引く意味を今一度考えさせる。

Spec Ops: The Lineは現実の理不尽さを訴えかけ、体験させるゲームだ。何が正しくて、間違っているのか。単純には割り切れない問題が襲いかかり、心を砂嵐のように乱してくる。

物語についていけていないゲームプレイ

物語は考えさせる内容な反面、ゲームプレイは凡庸なカバーシューターに終始している。土砂を使って敵を倒したり、砂を巻き上げて敵をスタンさせる、砂嵐が発生して前が見えなくなるなど、ドバイらしく砂を利用した仕掛けが用意されているものの局所的な使い方であり、本作に十分な個性を与えるまでには至っておらず、戦闘はごくごくありふれた平凡な内容に留まっている。

物語では倫理を問うような内容なのにも関わらず、敵の回避方法が戦闘以外用意されず、従来のシューターと同じように大量虐殺するしかないのが残念なところだ。確かに戦闘でしか問題を解決できない局面はあるとしても、それ以外の解決方法があればさらに物語に直結したゲームプレイを与えられたかもしれない。物語とゲームプレイの間には大きな隔たりが残ってしまっている。

自己正当化することが試されるアドベンチャーゲーム

シューターとしては平凡な作りだが物語自体は良く出来ていて、ゲームをクリアさせる動力になっている。米国万歳の脳筋物語ではなく、どちらかというと反戦寄りでプレイヤーに思慮を促す。仲間や一般市民を救う為の行いが結果的にすべて裏目に出て、救いも何もないやるせない展開は好みが別れるところだがストーリーテリングや伏線の張り方がしっかりしていて、合理的で納得のいくものに仕上がっている。倫理を問う選択シーンはいずれも重く、選択するのを戸惑わせるほど。トリガーハッピーの私でさえ、引き金を引くのをためらうところもあった。一風変わった戦争ゲームや考えさせる物語が好きな人にはオススメしたい。


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする