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Tomb Raider Anniversary(2007-Crystal Dynamics)

■安易な焼き直しは過去の栄光を地に落とし、マイナスのスパイラルしか生まない

今日、あらゆるエンターテイメント業界では「焼き直し」という言葉が使われている。焼き直しとはすちわち過去の作品をもう一度手を加え、新たな物のように発表する行為を指し、横文字大好きの日本人はリメイクと読んだりすることもある。焼き直しされる作品というのは大抵、評価の高い名作に行われることが多く、それによって手堅くお金儲けをしようという魂胆である。中には忠実に再現しているもの、原作とは大きく形を変えて、原作を超えた!と言わしめるものもあるが、原作の有名税に託けただけの悪質な作品は原作レイプ・焼き回し作品と呼ばれる。同じアイデアや素材を何度も何度も使い回す創造力に欠けた姿勢は決して褒められた行為ではないが、枯渇した人達によって日常茶飯事に行われているのが現実。原作をNTRされ、怒りに震えたファンは後を絶たない。例えば話題作が目白押しだった2004年。アニメの実写リメイクが相次いだ激動の一年だった年。デビルマン、キューティーハニー、キャシャーン。キャシャーンは青臭い主張が目立つものの、逆にモラトリアムな自分には清清しく感じられ、新たな神話体系を取り組んだ点から、私は擁護の姿勢を取るが、一般的な評価はどれも芳しくなく、むしろ憤怒ものが占めていた。キャシャーンにしてもわざわざキャシャーンの題材を使わなくていいだろうという指摘については同意、原作レイプと言われても致し方ない。デビルマンに至っては呪われそうなのでコメントすら控える。安易な焼き直しが良い結果を生む確立は限りなく少ない。原作がある以上、そこには必ず何かしらの問題が付きまとう。

Tomb Raider Anniversary(以下Anniversary)はシリーズ十周年を記念してTomb Raider1(以下TR1)をリメイクした、シリーズ8作目の作品となる。今回も前作Tomb Raider Legend(以下Legend)と同じくCrystal Dynamicsが開発を行っている。エンジンにも同様のものが使われているが、ハイレゾな映像を楽しめるNext Generation設定は廃止されている。

初めに断っておくが私はこのシリーズのファンではなく、TR1はコンシューマ機でプレイしたことがあるが思い入れも特にない。手っ取り早く結論を言ってしまうと、Anniversaryはシリーズのファンならいざ知らず、初めてプレイしてみようかと思っている人には薦められない。このゲームの罪なところは対象が曖昧になっている点にある。初めてTRに触れる人向けに作っているのか、それともこれまでTRにお熱になっている人向けに作ったのか。Anniversaryは前者も後者も楽しめるゲームを狙った結果、アンバランスな出来になってしまっているのだ。TR1のような理不尽トラップはあるものの、自分で道を探して切り開いていく形式を廃して、目の前の配置された開発者の思惑通りに進まなければならないやらされている感の強いリニアなゲーム進行は面倒臭さばかりを覚える作業と化している。また、アスレチックアクションが作業と化しているのには理由がある。Anniversaryのマップは良くも悪くもリメイク後のPrince of Persiaに酷似しているが、それを攻略する為のアクション性の幅がこのゲームの主人公ララ・クロフトには欠けているのだ。ララ・クロフトは掴む、ジャンプと基本的な動作しか行えず、それゆえにアスレチックのバリエーションに枷を与え、単調さばかりが目立ち、解法が一つしか用意されていないせいでプレイヤーは与えられたものを四の五の言わずにやらされていると感じてしまう。

その観点から見れば本作はアクションアドベンチャーゲームではなく、アクションまでもパズルの一部であり、アクション性はTR1の頃に比べると退化していることを否定できない。TR1は明らかにパズルの為のパズルの如く、理不尽なトラップがたんまりと用意されてはいたが、Anniversaryの仕様とは異なり、プレイヤーのスキル次第ではショートカットを行え、広いマップを自由に探索できる寛容さがあった。それがアクション性に幅を与え、開発者によって作られたレールの上を走らされているのではなく、プレイヤーがイニシアチブを握り、自ら進めているような錯覚を与えたのだ。Anniversaryではその寛容さはほとんど失われ、開発者の想定通りに寸分狂わず進まなければいけないことをプレイヤーに強制し、安直すぎる思考が生み出したチェックポイントセーブを通過しながら一本道を進んでいく流れのせいで、TR1の頃の手探りで進む楽しさや死んではいけない緊張感すら無くなっている。そしてLegendの時と難易度はそれ程変わりはしないが、やらなければいけない作業の工数がやたらと増えた為にゲーム全体のテンポが極めて悪い。これらがAnniversaryにやらされている感を生んでいる癌であり、プレイヤーにフラストレーションを溜める原因である。

このゲームの仕様がLegendのララ・クロフトではなく、昔のレイラ・クロフトか、或いはPrince of Persiaの王子であれば、こんな事にはならなかった筈。後者が主人公であれば、このレベルデザインのままで十分に快楽性を与えることが出来ただろう。参考にしたのか、パクッたのかは問わないがララ・クロフトのシステム向けのレベルデザインとは言い難い。Legendの仕様でTR1をリメイクしようという考えや思考そのものが浅はかで、リメイクの仕方にも大いに問題があり、LegendとTR1の悪い所ばかりを引き継いでしまっている内容である。そもそもEidosはシリーズのマンネリを打破出来ないから開発元まで変えて大手術を行い、Legendを作ったのではなかったのか。せっかく新しい方向性を見出したのにも関わらず、過去をまた振り返る優柔不断さは愚の骨頂であり、TR1のネームバリューを使えば低脳連中は買うだろうという、某スク●アのようなエンターテイメントの精神を忘れた絶対商業主義的な汚い思惑が見え隠れする腐った性根は地獄の業火にいますぐにでも焼かれるべき。そんな愚者には自身が生み出したカルマや負の連鎖に一生苛まれ続ける道しか残されていない。

サンズオブタイムを使えば快楽に変わる失敗も、TRではストレスしか残らないのだ。なにもかもが前時代だ。
通路にはお約束のタイミング系トラップ。王子なら壁走りで駆け抜けられるところも、TRでは下をくぐるしか出来ないのだ。
王子なら華麗に壁走りが出来るところも、TRではそうもいかないのだ。
パズルは面白いが、作業と化したアスレチックはストレスしか生まないのだ。
今作から導入したスローモーションがシューティングを面白くさせると思ったら大間違いだ。
シューティングのつまらなさも我慢すれば楽しくなってくるんだ。きっと。信じるものは救われるんだ。



■Tomb Raiderファン以外は買う必要なし

特にコメントなし。色々と察して欲しい。

2007年6月16日 記

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Tomb Raider Anniversary

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