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STAR WARS REPUBLIC COMMANDO

それは韻文的に定められた物語。
生はさだめ、さだめは死。
意味を持って生まれ、意味を持って死んでいく運命。
抗わず従じること、それこそが定め。
生きる意味を疑うことは許されない。

血を分けた兄弟と成長を歩んだ日々は瞬く間に過ぎていった。
やがて戦況は悪化し、戦場へと投下される。
使い捨てのように扱われ、次々と倒れていく兄弟。
軍はそんな事を無視するかのように無理な指令を与え続ける。

不条理な扱いに抗うことが許されないなら…
せめてこの瞬間を惜しみなく兄弟の為に尽くしたい!

シネマチックとタクティカルの混血
「STAR WARS REPUBLIC COMMANDO」


- 生まれ出づる意味。あなたがここにいる理由。
冒頭であなたは存在理由を知る。

優秀な戦士ジャンゴ・フェットの遺伝子から作られたクローントルーパー。主人公はその中でも、精鋭を集め構成されたデルタ部隊のリーダーとなり、3人の部下を指揮して、無理難題の指令をこなしていく。一概にクローンと言っても、クローントルーパーの場合は指令に対して絶対服従するように植えつけられているものの、性格や個性においての柔軟性は考慮されており、同じ環境下で教育や訓練を施されたが、それぞれ異なった個を持ち合わせているようだ。

物語は同じクローン達と早足に成長していく過程から始まり、試験管の中で漂う赤子の状態、教育や戦闘の訓練を経た後で部下となる3人のクローンと出会う。お調子者のスコーチ、実直なフィクサー、冷静なセブ。そしてリーダーのあなた。その4人1組の少数精鋭「デルタ部隊」として戦場へと旅立つ姿が冒頭で描かれる。

冒頭部分で主人公の成長していく過程を追体験させたのは英断だった。主人公は「優れた遺伝子を継ぐクローントルーパーの一人」であることをしっかり伝えることで、右も左も分からずに始めたプレイヤーがゲームへ没入するのを手伝ってくれる。他のFPSのようにいきなり戦場のド真ん中から始めたのでは情報不足による漠然とした不安が残ったかもしれない。自分はなぜここに居るのか。ここに居る必要性はあるのかと躊躇し、疎外感を感じるFPSは往々にしてある。合理性に欠けた設定には目を瞑り、こちらからも積極的に歩み寄らなければいけないFPSが少なからず存在する。

SWRCの場合はクローンの始期から描くことでゲームとの距離を近付かせ、世界へ歩みだすのに手を貸してくれる。オギャーと産声を上げ、優秀な兵士への成長していく姿を体験させたことで、いまここに居る必然性や戦う(生きる)意味を感じることが出来るのだ。早い段階で主人公を理解させることで、物語は自然に走り出すことが可能になった。後は流れに身を委ねるだけ。簡単なようで難しいコト。SWRCは事も無げにそれを体現させた。

「主人公に成りきるのって、こんなに簡単なことなんだよ」
プレイヤーがゲーム世界に没入しやすい様に配慮が成されているのだ。

- 血を分けた兄弟と紡ぐ絆。デルタ部隊出撃!

ゲームは3人の部下を率いたフォーマンセルで進行していく。基本的に部下は予め定められたパスに従って行動し、こちらが指示を出した場合は、それを優先して行うようになっている。命令出来る内容は「集合しろ!」「ここを守れ!」「集中砲火!」など、一部場所では「ここから狙撃!」「ここから爆撃!」と部下を割り振り配置出来るようになっているが、タクティカル系にあるような非常に細かな指示出しは出来ないと思っていい。シネマチック:7とタクティカル:3のバランスを保ったゲーム性で、「特殊部隊系って逐次指示を出すのが面倒そうだな」と思っている人でもすんなり受け入れられる内容だと言っていいだろう。パスに従う部下の行動は非常に頼もしく、仲間と一緒に戦っている!という感覚を強く起こしてくれるはずだ。

部下や主人公が死んでも何度でも蘇生が可能で、ゲームオーバーは4人全員が死んだ時のみとなっている。主人公が倒れても、蘇生可能な点はゲームのテンポを損なわせない優秀なシステムだ。リコール&回復命令を下すと、仲間が戦火を切り抜けながら駆けつけてきてくれる演出は高い没入感を生み出している。ボヤーとしたバイザー越しから見える仲間の姿が仲間と強固に繋がれた絆を強く感じさせてくれるのだ。

仲間AIは黙々と戦うことはなく、結構な頻度で会話を交わし、思わずニヤリとするような冗談を交わす時も往々にしてある。それぞれ個性や存在感が有り、主人公も雰囲気を共有することで、部隊が生きているという説得力を孕ませることに成功している。生の感じられる心強い仲間との絆や繋がりをヒシヒシと感じられることだろう。戦争とはワンマンが強引に解決するものではなく、仲間と手と手を取り合い、助け合い、突破していくものなのだ。

プレイを通じて伝わる彼らの生まれ出づる意味やその虚しさ。そして永遠に従じなければならない悲しさ。SWRCをプレイした後で、映画・エピソード3を見返すとまた違った側面が垣間見えるかもしれない。

心強い仲間がいつも傍に居てくれる。

- 浅い銃撃感。不均衡なバランス。

照準はコンシューマ機のFPSのように大きく、円の中に敵を合わせれば補正してくれるタイプで漠然とした命中感しか得られない。サウンドも軽く、銃撃感に乏しい。撃っていて爽快感が得られないのはシューティングゲームとしてマイナスである。
ヘルスは自動回復機能のあるシールドが切れた後で減っていくタイプだが、ダメージバランスがイマイチ。多脚戦車の一撃よりも、ドロイドの持続的な電撃でやられてしまうことが多々有り、納得のいかない部分があった。

一方、敵の強弱のバランスはしっかり取られており、戦況に応じて武器を変更することで戦闘は格段に楽になる。例えば、硬い装甲を持ったスーパーバトルドルイドにはグレネードランチャー系、羽虫にはスナイパーライフル等、敵毎に攻略し甲斐がある。弱点を突きながら戦っていくのが楽しい。敵のAIはたまに膠着する事もあったり、賢いとは言い難いが、行動パターンは様々で対処法を考えるのも一興。また、登場キャラ全てのアニメーションが非常に滑らかで、存在感が有る。

多彩な攻撃方法で攻めてくる。
重装甲も弱点を突けば、コチラのもの。

- 版権物ながらも高い水準を保ったFPS。

STAR WARSの版権物は良く出来たものが多い。SWRCはそのジンクス通り意外に良く出来たFPSである。WWIIモノのようなシネマチック展開と、半自動化されたタクティカルな分隊行動。両者をうまく両立させ、どちらのテイストも同時に楽しめる一石二鳥な内容。悪く言うと良いとこどり。分隊行動はこれまでにない擬似COOP感覚を孕んでいる。ここまで仲間に存在感が有り、頼もしく感じられたFPSも珍しい。

STAR WARSシリーズが好きな方には特にオススメするとして、FPSをよくプレイする人でも意外に楽しめる内容ではないかと思う。いや、実際楽しんでプレイしてました。

多脚萌え。
たまには命令でも。

□Link
- STAR WARS REPUBLIC COMMANDO

2007.4.10 記

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