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CT Special Forces - Fire For Effect(2005-Hip Interactive Europe)

■アクションとステルス。一つで二つ味わえるライトなノリのTPS

今まで誰も目にしたことが無い革新的なものが現れれば、周りは必死で模倣を試みるのが世の流れだ。そして模倣の中から、いかにオリジナリティ確立させるか。フォロワー達は切磋琢磨しながら、生みの苦しみに悩まされる。安易な物真似を市場は許しはしないし、それは愚者のやることだ。小説、映画、音楽。今日、あらゆるエンターテイメントで二番煎じという言葉が使われている。もっと平たく言えばパクリ、オブラートに包めばオマージュ、インスパイア、リスペクトと時と場合によって使い分けられている。ゲームも例外ではなく、大ヒットしたGears of WarはKill.Switchの二番煎じだと言えるし、いまやスニーキングの代名詞となっているSplinter CellもまたMetal Gear SolidやThiefの二番煎じだ。悪質な模倣を除き、二番煎じは決して悪いことではないし、むしろコミュニティの繁栄には必要不可欠である。パイオニアがいくら素晴らしい新地を見つけたとしても、誰もその魅力に気付かず、後を耕かす者が現れないのでは直ぐに荒廃を迎えてしまう。それを知っている頭の切れるパイオニアは模倣されることを拒むどころか、むしろ積極的に模倣を薦める者も居る。例えばサイバーパンクの旗手であるウィリアム・ギブスンはフォロワー達を歓迎し、更にコミュニティが広がっていくことに喜んだ。彼が居なければ情報の海で成長した生命体と上位シフトでうんぬんかんぬんというオチまでニューロマンサーの丸パクリな攻殻機動隊は無かったかもしれないし、後続のマトリックス(これをサイバーパンクと呼ぶかは個人の良心に任せる)も生まれなかったかもしれない。

今回紹介するCT Special Forces(以下CTSF)は対テロ特殊部隊に属する二人のキャラクター「アウル」と「ラプター」を操作し、各地で急に発生したテロを鎮圧するTPSだ。アウルは光学迷彩スーツを纏い、サイレンサー付きの銃器でコッソリと暗殺していくステルスを得意とし、対するラプターは防弾ベストに身を包み、強力な重火器を扱う過激なアクション派。この二人をレベル毎に交互に操作しながら、ミッションは進行していく。ゲームをプレイすれば先駆者の影響を強く感じることだろう。壁越しからの銃撃―カバーアクションはKill.Switch、ハイテクガジェットを使ったスニーキングはMetal Gear Solidである。CTSFはこの二つの要素を同時に楽しませ、飽きさせないようにプレイに変化を与えようと試みているのだ。

アクションとステルス。二人の主人公を用意し、明確にゲーム性を区別しているように見えるが、実際の所はゲームが進んで行くに連れ、その差異は縮まっていく。アウルのステルスミッションと言ってもアクション寄りの内容で、たとえ光学迷彩を使用していようと敵を排除しなければ進むのが難しくなってくる。敵が大量に登場する場面もあり、全て殺傷していった方がスムーズにことは進む。スナイパーは光学迷彩を見破って正確に攻撃してくるのでステルス行動の意味もない。ハイテクガジェットはあくまでプラスアルファで、基本はカバーアクション頼りになる。暗視、ソナー、熱感ゴーグル等があるが、使うべきところはほとんど無い。

ラプターは防弾ベストを装備している分、ゴリ押しでも進むことが出来るが、AIの出来が総じて悪く、棒立ちが常でただの的と化している。また敵のバリエーションにも乏しい為、ガンガン進んでいくだけでは非常に退屈である。防弾ベストの残量がMAXであろうとロケットランチャー相手では一撃で死んでしまい、敵が限度を超えて登場した場合にはこちらもカバーアクションに頼らざるを得ないわけで、二人の主人公に分けたのにも関わらず似通ったゲーム性になってしまっている。Kill.SwitchとSplinter Cellくらい内容が異なれば、違ったかもしれないが、これでは弱い。またやらされている感じが強いリニア進行で、レベル構成も変化に乏しい。ミッションの構成もラプター、アウルの白兵戦、ビークル戦、スカイダイビング戦の4パターン。ロケーションは異なっているが、プレイしている感触は同一。その4パターンを延々と繰り返している印象が強く、それが26レベルもあるのだから冗長極まりない。ゲームが後半になるのに従って、サービスサービスと言わんばかりに敵が大量にスポーン。余程ボリュームに飢えている人以外は「いい加減にしろ」とうんざりしてくるだろう。

そしてその苛立ちを更に助長するのがバグの存在である。CTSFはチェックポイント式のセーブ方式を取っており、プレイヤーが自由にセーブを取ることは許されない。それはいいとしても、頻発にゲームがクラッシュし、再起動するとまた各ミッションの初めからしか選ぶことが出来ない仕様にはいくら穏便な人であろうと血流は自然に沸騰する。次にキャラクターの情報を表示する大事なHUD(ライフ、銃、グレネード、隠密インジケーター、タイムリミット)が場所によって消えてしまう。多少なら構わないが、HUDが消えている状態が半分以上も続くのだからもう呆れ返るしかない。ライフ値が分からないのでいつのまにか死んでいたり、フラッシュグレネードだと思って投げたら拡散グレネードで近くの壁に当たって自爆したりということが頻繁に起こる。それによって脱力感に喫するか、壁に拳を叩きつけているかは個人次第。ちなみに私は前者で、その度に独裁者が好きな言葉を心の中で読み上げ、気持ちを落ち着かせていたのは言うまでもない。粛清、淘汰、重税、抑圧、弾圧、投獄、処刑…。

ラプターは重火器を活かせるミッションが多い。
敵さんはやたらと可燃物の近くがお好き。
防弾ベストや光学迷彩スーツは電力で回復する。
アウルは光学迷彩で敵を翻弄。ここまでは良かったのに。
ビークル戦は爽快感があるが、そればかりが続くと…。
スカイダイビング。計5回程。いい加減にしろ。



■カバーアクションを堪能できるステルスアクションTPS。冗長極まりないものが好きなアナタに。

クソミソに貶しているように見えるが、これは私があまりにも単調かつ冗長な内容にうんざりしてしまった為。アクション寄りのTPSが好きで、ボリュームが多いものを求めている人が居ればこのゲームは最適である。うんざりする程、ボリュームがあり楽しめるだろう。

2007年6月9日 記

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CT Special Forces - Fire For Effect

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