FPS UnKnown


Chaser

Boom! Headshot!
後方に聞こえる敵の断末魔が、更に昂奮を加速させ、知覚を鋭敏化させる。
時間の流れが緩慢になった今、遮る者は何も無い。
狙うのは首部のみ。ただひたすら一点に集中し、引き金を絞る。

頂点に達した闘争本能。轟く内なる叫声。
Boom! Headshot!
Boom! Headshot!!
Boom! Headshot!!!
*Boom! Headshot!とは・・・


□Chaser

開発はCaldron。自社のCloakエンジンを使用した初めてのFPSとなる。メディアクエスト社から日本語版が発売されていたが、PCゲームから撤退した今は入手が困難。


□どこかで見た設定、引き込まれないストーリー展開

過去の記憶を失っているものの、宇宙ステーションで意識を取り戻した主人公チェイサー。直後に武装した兵士に追いかけられるが、地球へと運良く逃げ延び、記憶を思い出すために紛争するー。

火星、記憶喪失、レジスタンスに荷担、頭に埋め込まれた盗聴爆弾<スパイダー>ときて、何かを思い浮かべる人も多いだろう。ストーリーを重視しているということだったので、エンディングを楽しみにしていたが、これが後味の悪いものとなっている。
ネタバレしておくと・・・主人公はレジスタンスのメンバー「チェイサー」ではなく、政府組織の「ストーン」であり、チェイサーを殺した張本人。レジスタンスの本拠地を見つけるために記憶を埋め込んでチェイサーを演じさせた。記憶が混濁した主人公は仲間を射殺。その後に、主人公は敵に撃ち殺されて終わる。・・・というオチ。最後に間に合わせの様に一気に説明され、その後に話が二転三転せず、そのままスタッフロールを迎えて唖然としてしまう人もいるだろう。別に悪いわけではないが、ストーリー展開に問題があるせいで陳腐な印象を受けてしまう。
主人公に感情移入できないのはマズイ。これは個人の差もあるが、なにを考えているのかが掴みにくく、巻き込まれ型主人公としての魅力にも欠けている様に感じた。他にもキャラクターは色々と登場するが、言いたいことだけ言ったら即死亡、感情起伏の描写がないままに突然裏切ってくるなど首を傾げる部分がある。
終始、淡々と進行していく感じで、これがもう少しストーリーにのめり込ませる展開ならばエンディングの見方も変わっただろう。

箱裏の煽り文句には
地球と火星を舞台に雄大な冒険が進行すると共に、
チェイサーの過去について驚くべき真実が徐々に明らかになる。

死の陰謀の罠を暴き、それは世界の創造を揺るがす事となる
忘れてはいけない、誰もが敵ということを・・・。
確かに的を得ているが、ひとつだけ言いたい。揺るがしてナイヨ。セカイノ ソウゾウ ヲ ユルガシテ ナイヨ。

ここでは雄大な冒険の幕開けを期待していました。 シマコ。見せ場、数十秒の薄命。

□アドレナリンモードで蹂躙する疾走感&爽快感

ダメージはシビアなバランスで、近距離で派手に打ち合おうとするとすぐに死んでしまう。しかしアドレナリンモード(バレットタイム)をうまく使うことで、ゲーム性は大きく変わってくる。アドレナリンモードはゲージが有る限り(遅いが徐々に回復していく)、いつでも使う事が可能。ダッシュで駆け抜けながら、敵を発見したら瞬時に切替えて対応し、的確にヘッドショットを決めていくのが実に爽快だ。スローモーションで敵が崩れていく様は陵辱感が擽られて心地良い。曲がり角や部屋に入る前は、パッと覗いて敵の位置を確認した後に、アドレナリンモードで突っ込むということも出来る。

敵のAIは物陰にカバーを取ることもあるが、発見しても追いかけずにじっとしていることやオブジェクトに引っかかったりする場合もあった。ただ、ダメージバランスがシビアなので、こういう穴があるお陰でバランスが取れているように感じる。

問題があるのはレベルの作り。プレイヤーが発見しにくい嫌らしい場所に敵が配置されていて(背景に紛れて見づらかったり)、気付く前にやられてしまうケースが多い。トリガーで登場していると感じさせるシーンも目立つ。プレイヤーがある箇所を通ると突然沸いてきて、一度通った場所だったりすると興醒めしてしまう。
中盤に日本を舞台にしたレベルがあり、デザイン的には申し分なく気にいっているが、このゲームバランスには合っていない。やたらと扉が配置されていて、扉の前に敵がいる場合もあり、即死してしまう確立が高い。このゲームは扉が閉まるのが非常に早いので、何度も開けるのが億劫で戦いづらくさせている。
終盤の火星は移動シーンの冗長さが癪に触る。似たような構造が続き、見た目的にも退屈でとにかく長い。落ちたら即死のアクション要素や見つけづらい進行方向がテンポを悪くさせている。移動シーンの冗長さは全体に言えることで、半分削って戦闘のテンポアップをした方が良かったのではないだろうか。海中、スナイプで援護、パワードスーツの防衛戦はアクセントとして入れているようだが、長すぎてダレてしまう。

中距離ー遠距離戦が中心の工場や海岸のレベルはゲームバランスに合っていて出来が良い。敵が比較的アクティブに動いてくるので、デスマッチ的な緊張感も孕んでいる。

肉薄して、鉛玉をぶち込むカイカン。
造形はそれほどでも無いが、ライティングが美しい。 火星。それは冗長の極まり。

□優劣なんて無いよ~ 無難な出来だからね~

さして秀でてる所も見当たらないし、悪い面もあるが貶す程ではない。そこそこ楽しめる無難な出来に仕上がっている。個人的にはいわゆるB級的な特別な個性を強く感じられなかったのが残念な点。何度も言うように良くも悪くも無難な出来である。

Caldron社の今後が気になるが、コンシューマよりのゲーム開発へと移ってしまっているようだ(PC版も発売されているが知名度自体が低い)。コンシューマでも無難な評価を下されているようで、つくづく無難という言葉が似合う。別に無難は悪くない。それも個性だ。ボクは好きだ。

降りしきる酸性雨。漂う退廃感。いいよ、姉様、いいよ。
台湾情緒溢れるズレたジャパンに、サイバーパンク好きの弟はもうクラクラです。

□Link
Chaser
Cauldron
Chaser hotgames

2007.1.25 記

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