The Lord of the Rings: War in the North – 悪くはないが値段は高い(1)

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指輪物語を題材にしたアクションRPG。主人公はドワーフ・エルフ・人間の三人で、原作では語られなかった裏舞台の活躍が描かれている。指輪物語本編のゲーム化は映画公開時にされている為、今作ではこのゲーム独自の物語を描こうというわけだ。フロドや馳夫、ガンダルフやギムリなどの主要な旅の仲間メンバーはNPCとしてチラッと登場するが操作はできない。旅の仲間の造形は概ね映画版に似せて作ってあるが、特徴の薄い人間キャラに関しては、開発側に腕が足りないのか、それとも肖像権の問題なのか不明だが、あまり似ていない人も居る。

ドワーフ・エルフ・人間の三人一組で行動することになり、オンラインCOOPにも対応。ドワーフが戦士、エルフが魔法使い、人間が剣士という立ち位置で、それぞれ取得できるスキルが異なるものの、ステータスの上げ方次第で近接向きにも遠距離戦向きにも調整可能。ご存知のように指輪物語における魔法使いは杖で敵を撲殺する肉体派であり、従来のファンタジーのようなひ弱な存在ではない。このゲームでも原作に沿っており、魔法使いはバトルメイジ的な位置づけである。

ただ、戦士や剣士が個人強化スキルや攻撃スキル中心に対して、魔法使いは回復効果があって矢を防ぐシールドを作るスキルがあるのでサポートにも向いている。それぞれのキャラは弓・クロスボウ・魔法と何らかの遠距離攻撃手段を持っている為、戦士や剣士だからといって近接攻撃だけしかできないというわけではないし、弓に特化することも可能となっている。

体力が無くなると瀕死状態になるが、仲間が何度でも蘇生することができる。蘇生すると体力が全回復し、ペナルティもないので、回復するならコストの高いポーションを使うよりも瀕死になって蘇生した方が良いだろう。

プレイキャラの変更はメインメニューとマップの区切りのみ。プレイ中にいつでも変更することはできない。ステータスやスキルや装備については、選択中のキャラしか弄ることができない為、全員分を弄ろうとするといちいちメインメニューに戻ってキャラを変更しなければならず、面倒臭い。

ただし、AI操作のキャラはプレイキャラの強さに応じて調整が入るらしく、覚えていないスキルを使用したり、入手していないはずの装備品を身に付けていたりするので、わざわざキャラを切り替える必要はない。気に入ったキャラだけを使用していても問題がないように作られている。装備品は結構種類があり、外見に反映されるので着せ替えが楽しい。

粥村や裂け谷などの村エリアではクエストを請け負ったり、買い物ができる。戦闘エリアにはポータルが置いてあって、そこから村へ戻ることも可能である。一度クリアしたマップはいつでも再挑戦でき、好きなようにレベル上げもできるようになっている。

マップは一本道で、湧いてくる敵を倒すと次の道が開く方式。戦闘重視の内容で、即死イベントや厄介な協力イベントはなく、良く言えば戦闘に集中できて野良COOPがやりやすい、悪く言えば単調である。EAから出ていた三部作シリーズは友人と一通りプレイしたのだが、厄介な協力イベントのせいで何度もやり直して辟易とした記憶があるので、個人的にはCOOPタイトルなら戦闘重視でも構わない。ただ、この辺は個人の好みによるだろうし、肝心の戦闘が気に入らなければ厳しい内容と言える。

戦闘はお手軽操作で爽快感重視のスタイル。敵を斬りつけた時の命中音や出血の表示はちゃんとあり、首チョンパのゴア表現も存在し、クリティカルヒット時にはスローがかかり、エフェクトも邪魔にならない程度に用意されており、攻撃の命中感や爽快感はしっかり味わえるようになっている。敵の量が多いので立ち回りを考える必要はあるが、あまり防御や回避の必要はなく、攻撃連打でゴリ押しができる。左クリックで敵を攻撃し、敵の頭上に黄色いマーカーが出たら右クリックでクリティカルヒットという感じでテクニックはそれほど必要ではない。

「スターウォーズと指輪物語の版権ゲーに大ハズレなし」が私の持論なのだが、本作もその例に漏れず、少なくとも駄作ではない。最近、The First Templar、Hunted: The Demon’s Forge、The Cursed Crusadeなど、同系統のタイトルが多いが、その中ではマシな方の部類に入る。COOP対応のお手軽なアクションRPGとしては”悪くはない出来”だ。しかしながら、フルプライスの50ドルは高価であり、6割引き程度が妥当なラインではないかと思う。

また、ゲーム独自の物語の為、版権ゲーとしては微妙と言わざるを得ない。というのも、ファンタジーの礎となった指輪物語自体が普遍的になりすぎて、今となっては世界設定に特徴が見当たらないのだ。エルフやホビットにドワーフなんてRPGならどこにでも居てありふれているし、敵のゴブリンやトロールに関してもそう。そこで「指輪物語の特徴といえば何か?」なのだが、やはりそこはフロドや馳夫、ガンダルフやゴクリなどの個性豊かな登場人物、旅の仲間たちによる絆、そしてつらぬき丸や塚山出土に指輪の存在が、指輪物語を指輪物語たらしめている要素であると言える。しかし、本作ではそれらが前面に出てこない為、指輪物語らしさをあまり感じられず、普通のRPGと大して変わりがないように見えてしまう。フロドとサムのやおい展開、ゴクリのいとしいしとがない指輪物語なんて、エロのないエロゲーみたいなものだ。それに本作独自の物語自体も、あくまで旅の仲間を支える裏方の仕事という感じで本編に比べて地味である。

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