Metro 2033 – 節約戦士メトロちゃん(1)

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ロシアの作家ドミトリー・グルホフスキーの同名小説が原作の終末ホラーFPS。核戦争後、冬将軍とミュータントの脅威によって地下に潜まざるを得なくなった人々の絆や争いが描かれている。STALKERの開発に関わったスタッフが参加しているらしく、外見や雰囲気には共通点が多い。

STALKERはオープンワールド系の作りで自由に探索できる範囲が広かったが、このMetro 2033はリニアな進行となっている。隠し部屋やシークレットアイテムがかなり用意されており、探索心をくすぐるところはあるものの、基本的にマップは一本道で自由度は高くない。その代わりに演出が重視され、頻繁にキャラクターの寸劇が入り、展開に起伏がある。急かされるような場面は少なく、プレイヤーがある地点に到達するまでNPCはじっと待ってくれることが多いので好きなように風景を眺められるが、空気の悪いところではガスマスクを装着する必要があり、フィルターは有限だ。そういう場所では自然と気持ちが焦り、その結果緊張感を感じる。人々が避難しているキャンプは安全地帯となっており、探索と一休みするシーンを交互に用意することで緊張と緩和をうまく使い分け、メリハリのついたゲームプレイを提供している。

キャンプには女子供がきちんと存在し、生活感を出そうとする試みは理解できるものの、話しかけられる人物は一部で他はただの置物と化しているのが残念なところだろうか。ただし、このMetro 2033は一方通行な体験型のゲームであり、個人的にはすべてのNPCに話しかけられなくても気にはならなかった。

懐中電灯も有限であり、時間が経過すると光が衰えていくが、小型発電機をキコキコすることでいつでも充電可能。また、お手製の空気銃も空気をキコキコして補充しなければ威力が弱まっていく。この仕様は理にかなっていて、なおかつ自給自足の生活を体験させるのに成功している。計器類や機械、マップは細部まで非常に凝っていて、環境から物語を連想できるところはソ連のゲームらしい。予め配置されている死体もそれぞれポーズが異なっていて、亡くなる前の状況を容易に想像でき、とても抒情的だ。こういった細かな積み重ねが重厚な世界観を構築するのに役立っているのだろう。そういうのが好きな私はウキウキしながら、しげしげと一つ一つ鑑賞していた。一本道ゲーだとしても、ここまでディティールが作りこんであれば退屈しない。

特に私が惹かれたのは銃の造形だ。地下に暮らす人々は戦争前の銃器を自前で改造して使っている。手作り感溢れる銃器が多数登場し、まるで芸術品のよう。独創的な造形が魅力的だ。

演出は仲間と共闘したり、敵から逃走するシーンの他に、FEARのナイトメアシークエンスやSTALKERのアノマリーを彷彿とさせる展開が用意されている。Half-Life、Call of Duty、FEAR、STALKER辺りの美味しい部分をミックスしたような内容でバリエーションは豊かだといえるだろう。しかしながら、それらをやり尽くした者にとっては既視感が強く、新鮮味に欠けるかもしれない。

ミュータントは壁を伝って襲いかかってきたり、アニメーションは凝っていると言えるものの、愚直に正面から攻撃してくるものばかりで戦闘が一方的になりやすく、駆け引き性に乏しい。対人戦はスニークとアサルト、どちらで戦うかを選べる点は評価できる。AIの思考も割と自然で主人公の姿を発見したらその辺りを重点的に警戒し、危険を感じたら物陰に潜む。マップのルートが限られている場所では敵はずっと同じ場所でキャンプを続け、不用意に姿を晒して危険に飛び込むような真似をせず、好戦性よりも慎重さが重視されているようだ。

この世界では貴重な軍用の弾薬が通貨代わりになっており、店でアイテムや弾を補給したり、銃を購入できる。しかし、次のマップがどんな場所でどういうものが必要なのかが分からない為、選択するのが難しく、また売っているカスタム銃が道端に落ちていることもあり、購買欲が沸かない。セーブはチェックポイントで勝手に上書きされていく為、試しプレイができず、どこでセーブされているかも分かりづらく、中断しにくい。セーブされていると思って中断したらセーブされていなかったということも起こりうる。セーブに関してはいつの時代のゲームなんだと言わざるを得ない。

シューティング部分や操作性はロシアのゲームとは思えないほど良くできており、完成度が高い。デザインや世界観はSTALKERという偉大な先人がいるせいでインパクトに欠けるものの、地下鉄の作り込みは素晴らしい出来だ。ロシアや東欧のゲームは尖った内容で魅力的だがとっつきづらく、一般向けとは言い難いものが多い。基礎の部分が洗練されていて、世界観もそれなりに異国情緒がある、このゲームはある意味貴重と言えるかもしれない。難易度もかなり低い為、最近、FPSを始めた人に向いている一本と言えるのではないだろうか。

コメント

  1. あけましておめでとうございます、いつも楽しく見させております。
    メトロは難易度がかなり高いという意見と低いという意見があるのですが、
    PC版とコンシューマ版、あるいはパッチやMODの有無で変わるのでしょうか?
    参考までに、難易度はどれでやっていますか?

  2. あけましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願いします。
    難易度はノーマル(非レンジャー)でプレイしています。
    弾は豊富に拾うことができ、店でも補充できる。敵にはヘッドショットが有効で理不尽に硬くない。メディキットを使わなくても体力回復が早く、放っておけば全快する。
    人間のAIは待ちが多く、積極的に追い込んで来ない。ミュータントは走っていれば攻撃を避けられる。
    対ミュータント戦では仲間と共闘することが多く、仲間に任せていれば自分はほとんど手を出さなくていい。
    一撃死などもなく、普通のアーマーでもかなりダメージが耐えられ、ステルススーツを着ればスニークが容易になり、一部の場所では交戦せずにスルーできる。
    任意セーブはできないがセーブ間隔は短め。
    チャプター5までプレイした限りでは、以上のことから難易度は低く感じました。
    東欧産のゲームとは比べ物にならないほど簡単で、欧米のAAAタイトルと比べても難易度は抑えられている方だと思います。
    難易度が高いゲームの定義は、ヘルスが有限で回復アイテムも限られている、ダメージバランスが厳しい(一撃死もあり得る)、AIが超反応で精密射撃を行う、セーブが限られている、セーブ間隔が長い、などでしょうか。

  3. 三が日過ぎましたが、あけましておめでとうございます

    >節約戦士メトロちゃん
    >ロシアの作家ドミトリー・グルホフスキーの同名小説が原作の終末ホラーFPS。

    一瞬、え、と思いました(笑)。

  4. 今年も御贔屓に。
    後半のゴリラが異様に堅く、初回プレーでは弾薬不足に陥りましたが、
    ヘッドショットの有効性を知って意図的に狙うと、楽になりました。

  5. >>TiKuWaさん
    あけましておめでとうございます。本年もよろしくどうぞ。
    昼はナース、夜は場末のバーで地下の妖精として働くアイドル「メトロちゃん」が極貧と闘いながらアイデンティティを模索していくハートフルラブコメディーというのはどうでしょう。
     
    >>Z.O.Eさん
    こちらこそよろしくどうぞ。
    いまのところ人間はサイレンサーピストル、ミュータントはオートショットガンで事足りています。
    ライフルは間違って軍用弾を使用してしまいそうで怖くて使えませんw
    ミュータント戦がやたらと多くてなんだかなぁと思いながらプレイしています。
    個人的には対人戦がしたいのですが・・・

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