>observer_ 感想 – ビジュアルは高品質だが物語は凡庸、強烈な演出は人を選び、多大な疲労がプレイヤーを襲う

2017年8月にリリースされた>observer_はポーランドのBloober Teamによるアドベンチャーゲームである。2016年にリリースされたLayers of Fearは作りこまれた洋館とサイコな演出で人気を博した。

今回は雨が降りしきる荒廃した未来都市を舞台に現実と虚構が入り混じるサイバーパンクな物語が繰り広げられる。Layers of Fearで見せた手法はより先鋭化され、さらに人を選ぶ作品になった。

万人受けか、はたまたカルトか。高品質な作品を作るにはなにはともあれ先立つ物が必要となる。間口を広げ、万人受けを狙わなければその先に待つのは明確な破滅だ。

しかし、Bloober Teamの作品は非常に高品質でありながら万人を寄せ付けない手法を取っている。しかも、Layers of Fearのちょうど一年後に本作をリリースしているのだから開発速度も異常だ。これが受け入れられる欧米市場の懐の深さを驚くと共に、このエネルギーはどこから来るのだろうと不思議に思う。

作りたいものを作る。それがインディーゲームの本質である。本作はインディーゲームで行われる実験的な手法の数々をまとめ、磨き上げた作品といえるだろう。奇抜な演出の数々を大作級の密度で仕上げている。極めてニッチでありながら高品質。このアンバランスさが本作の特徴であり、他では見られない魅力となっている。

物語は人間の脳にハッキングできる刑事ダニエル・ラザルスキの目線で語られる。ある日、ダニエルは疎遠になっていた息子からメッセージを受け取り、アパートを訪れると死体を発見してしまう。そこで殺人事件を捜査しながら息子の行方を追うのが目的だ。

アパートには住民が住んでおり、あなたはインターホン越しに聞き込みを行う。アパートの住民は少し様子がおかしい人間ばかりで受け答えも異常だ。インターホンの映像には実写の目や意味不明な映像が映し出され、得体の知れない薄気味悪さを与えてくる。アパートの中は自由に探索ができ、住民に聞き込みを行うか、あるいは行わないかも自由で刑事気分を味わえる。

ダニエルは電子スキャンとバイオスキャン、二種類のスキャンが行える。それを活用して手掛かりを探していくのだ。スキャンモードに入ると画面の色調が変わり、手掛かりはハイライトで表示されるので難しいことはない。そして、ダニエルの最大の特徴が電脳ハッキングだ。人間に神経接続し、その人の記憶を追体験して真相に迫っていくことになる。

記憶の世界は現実をベースに構築されているものの、時には支離滅裂で不条理な光景が待っている。その人間の主観によって異常に戯画された世界が広がり、そこに迷い込んだ人間を翻弄する。

トラウマや苦しみによって構成された世界はまるで悪夢のようで、終わることのない無限地獄が続く。強烈な演出や奇抜なビジュアルは高品質で感心する内容であるがゲーム中のかなりの時間がそこに費やされ、やや長すぎると感じる人もいるかもしれない。

他では見たことのないものが見れる。やったことのないものがやれる、というのは大変魅力的だが、何事も分量が肝心でそこを誤ると台無しになりかねない。静と動、緊張と緩和。大事なのはバランスなのだ。ホラー映画で2時間ずっとビックリ演出が続いたり、アクション映画でずっとバトルシーンが繰り返されるのを想像して欲しい。そうしたハイライトシーンはダレ場があるからこそ、より輝き、インパクトを与えるものなのだ。

もちろん、そのさじ加減やバランスの良し悪しは人それぞれなので明言は避けるものの、本作ではサイケデリックで息も詰まるような重苦しいシーンが延々と続く為、プレイ中は多大な疲労感に襲われる。高品質な世界観は没入感を高めるがさらに疲労を高め、挙句の果てには疲れるからやりたくないという境地まで連れていく。常に緊張を強いるトーンが苦手な人は要注意だ。

本作では現実と虚構の境界、その危うさが描かれる。情報を得る為に死体の電脳ハッキングを繰り返したダニエルは次第に境界線があやふやになっていき、幻覚に浸食されていく。どこまでが本物で幻覚か、当人には区別すらできないし、他人と自分が同じものを見ている保証なんてどこにもないのだ。あなたが見ている青色は他の人にとって緑色かもしれないように。

ビジュアルや演出は非常に素晴らしい本作だが物語は月並みな所で着地する。グレッグ・イーガン、フィリップ・K・ディック、ウィリアム・ギブスンなどを一通りかじった人間にとって、あまりにもありきたりな結末で肩透かしをくらう。非凡な外見や体験に釣り合っていない物語が惜しい。

まとめ

作りこまれた空間と真に迫った演出は刺さる人には深いところまで刺さる鋭利な仕上がり。心底不快にさせるほどプレイヤーの心をかきみだし、強烈なストレスを与えてくる。良くも悪くもLayers of Fearのスタイルを踏襲している為、Layers of Fearが合った人は楽しめるがそうでない人は避けた方がいいかもしれない。クリアまで5時間。マルチエンディング有り。

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『>observer_ 感想 – ビジュアルは高品質だが物語は凡庸、強烈な演出は人を選び、多大な疲労がプレイヤーを襲う』へのコメント

  1. 名前:UnKnown 投稿日:2018/06/30(土) 22:00:08 ID:7e1b314e6

    ありきたりなエンディングには拍子抜けしましたが語り口や演出は個性的なものがあり、
    トラウマ的な映像を楽しめる人なら合うんじゃないかと。
     
    私は初めの1~2時間で重苦しい雰囲気に疲れ、もう止めようかと思いましたが
    次の日になってみるとあの雰囲気をもう一度味わいたくなり、続きをやってみたら一気にクリアしちゃったという感じです。

  2. 名前:Pipopa 投稿日:2018/06/30(土) 15:53:47 ID:512446bbc

    Dick、Egan大好きです。
    面白そうですね。
    Layers of FearがなぜかSライブラリにあったのでやってみます。
    ありがとう。