私がウォーキングシミュレーターを愛する理由

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みなさんはウォーキングシミュレーターというジャンルをご存知だろうか? The Graveyard、Dear Esther、Gone Home、The Vanishing of Ethan Carterと聞けばピンと来る人もいるかもしれない。大雑把に説明すると「戦闘が存在しないゲーム」である。うん、ちょっと語弊があるかもしれない。まぁジャンルの定義付けは各々に任せるとして…。

ウォーキングシミュレーターという名称はThe GraveyardやDear Estherがリリースされた頃から頻繁に耳にするようになった。誰が言い出したのか定かではないが元々は「散歩しているだけでクリアできるゲーム」を揶揄したり、「ゲーム要素が薄いゲーム」を馬鹿にするような意味合いで使われ出したのではないかと想像している。

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ウォーキングシミュレーターに該当するゲームが過去に無かったわけではなく、昔から存在していた。その頃はアドベンチャーや探索ゲーと呼ばれたり、あるいはドリームエミュレーターなどと各メーカーが勝手に付けた名称で呼ばれていた。Dear Esther以降、ウォーキングシミュレーターが爆発的に増えた理由は以下が考えられる。

1.ゲームエンジンの民生化
2.DL販売の普及
3.低予算でテーマを絞れる

インディーメーカーの台頭とかぶる部分が多いのだがUnityやUE3(UDK)が小規模なチームや個人向けにエンジンビジネスを始め、DL販売が普及したことによって誰でもゲームを作って販売できる下地が整った。ウォーキングシミュレーターは戦闘やAIなどが不要なので開発の負担が少なく、個人で作れるのでニッチなテーマを扱うことができる。

ウォーキングシミュレーターは戦闘や駆け引き要素を省いた結果、物語や体験性に注力でき、少ない資本でディープな体験を与えることができるというインディーメーカー向けのジャンルだった。The GraveyardやDear Estherは良い意味でも悪い意味でも考えさせる作品で「こんなものを売ってもいいのか…というか、こういうのを作りたい!」とゲームプレイヤーたちに与えた影響は大きいのではないだろうか。

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私は2000年前後頃からずっとFPSを追い続けている。私がこのジャンルに魅了されたきっかけは深い没入感と射撃が好きだったからだ。主観視点でしか味わえない実在感や爽快な銃撃戦の虜になって以降、FPSをずっとやり続けている。FPSはシューターとしては最高のジャンルだが物語が足りない。もっと心が震えるような物語が欲しい。ゼロ年代はそんな風に考えていた。

しかし、ウォーキングシミュレーターと呼ばれる作品をプレイしていく内に物語とシューターの両立は難しいと実感し始めた。どんなに物語がよくできていても銃撃戦や戦闘が合間に入ることで中途半端な結果になってしまう。こっちは銃撃戦を楽しみたいのに演出やカットシーンが邪魔してゲームプレイを分断されたり、物語を楽しみたいのに水増しされた戦闘によって無駄な時間を費やし、何十時間もやっていたら物語を忘れてしまう。

どっちも両立するのは難しく、心に刺さるものを作るには一つに絞った方が良いという答えに落ち着いた。もちろんそこをうまく両立させているものも中にはある。中にはあるものの、一つに絞った方が良い結果になるだろうと個人的には考えている。

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それに銃撃戦を昔ほど欲することが無くなってしまった。昔はあれだけ撃ちまくってたのに最近はそうでもない。撃つ時間があるのなら他のウォーキングシミュレーター、物語を楽しみたいという方向に移っている。これはウォーキングシミュレーターに心に残るものが多いという経験からそうなってしまったのではないかと思う。プレイしてなにも残らないシューターには魅力を感じなくなったのだ。

大作ゲームは大状況(大きなテーマ)を描きたがる。どこかから敵が攻めてきて、人類や世界の危機が訪れたという設定ならドンパチも描きやすい。しかし、日々、日常を生きる我々にとって人類や世界の危機は身近と言えるだろうか。それよりも小状況(小さなテーマ)的な自分の存在価値、明日の食費、家族、人間関係の方が方がよっぽど身近で共感しやすくないだろうか。

戦闘という制約から逃れたウォーキングシミュレーターは小状況をピンポイントで描くことができる。それにうまく共感できれば心に強く残る。個々の作家性が強く出ているからこそ面白い。そこがウォーキングシミュレーターの魅力なのだ。感傷的な気分に浸りたい時はDear Estherを、恋愛に悩んでいる人はGone Homeを、好きな物に夢中で夢を持っているが周りに理解者がいない人はThe Vanishing of Ethan Carterを、親子や家族の問題に悩む人はFirewatchを、承認欲求と友達に飢えている人にはThe Beginner’s Guideを。ウォーキングシミュレーターは心に残る体験を与えてくれる…かもしれない。

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コメント

  1. たまに書く真面目なコラムすき

  2. 僕もすき

  3. もうちょっとまとめて書くつもりやったんやけど途中で飽きただで。ゴメンナサイネー。
    真面目路線はUNKさんのキャラに合わないから一年に一回くらいにするで。

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